本の感想 ~ 老人と海 ~ ※ネタばれ含む

アーネスト・ヘミングウェイ著作、「老人と海」の感想。

 

主人公の老人が、広い海を一人孤独のなかで精神的にも肉体的にも限界に達してしまった状態になりながらも、なお生き延びるために力を振り絞ってく様が、とてもリアルに描かれていた。

自分でも経験があるが、体力が失われて精神的にも追い詰められたとき、「右手よ、頑張れ」「左手よ、動け」というように言い聞かせながらでなければ体を動かすことができないときがある。思考も、悪い方向に考えるようになってくる。老人の独り言を通して、疲労困憊していく様が生々しく感じられた。

 

老人は結局、捕らえた魚の肉をすべてサメに食べられてしまい、せっかく身も心もぼろぼろになって戦ったのに残念な結果となってしまった。でも、頭や骨が残っただけでも、その獲物の長さから老人がどんなに大きな奮闘をしてきたのかが村の人には伝わったし、何より少年の信頼は失われることなく、むしろ尊敬の気持ちが強くなったようでもあった。人生、運に左右されることばかりだし、どれだけ頑張っても報われないこともあるかもしれないけれど、それは決してすべての努力が無駄だったわけではなく、やり切ったことに対する達成感であったり、経験として培われるものがあったり、何かしら残るものがあるのだということを教えてくれた気がする。自分の生き方や決めた道を信じて、最後まで諦めずに戦い続けることで得られるものは必ずあるのだと、感じた。

 

でも、命を懸けてまでやるべきことなのかどうか・・・。

老人は無事に家に帰れたからよかったものの、もし死んでしまっていたら、残された少年はショックを受けて心に痛みと傷を残すだろう。

志を成し遂げることも大切だけれど、魚が大物だったとしても、ダメそうだと思ったらきっぱり諦めて、自分の命を何よりも優先するべきだとも思った。漁師のプライドがあったのだろうし、命を懸けてしか得られないものもあるのかもしれないけど・・・。

 

また、この作品を読んで、老人と少年が互いに愛し信頼し合っていることがよく伝わってきて、とても心が暖まった。老人が帰ってきて少年と話したとき、「だれか話し相手がいるというのはどんなに楽しいことかが、はじめてわかった。」と老人は心の中で思う。何度も海でピンチにあったときにも、「あの子がついていてくれたらなあ」と何度もつぶやいていたけれど、老人は少年の存在の大きさを、この度の漁でしみじみ感じているように思った。

一人孤独のなかにずっといることは、本当につらい。

老人にとっての少年のように、誰か一人でもそばにいてくれる人がいれば、

人は安心と自信を持ち続けられるのだろう。